毎年七月十四日~十六日

 おおよそ、今から1300年前、和銅三年六月十五日に熱海湾で漁夫が網をおろしていたとき、御木像らしき物がこれに入ったので、不思議に思っていると、童子が現れ『我こそは五十猛命である。この里に波の音の聞こえない七本の楠の洞があるからそこに私を祀りなさい。しからば村人は勿論いり来るものも守護しよう。』と告げられ、村民達が探し当てたのが、この熱海の西山の地でした。
また、御神前に、麦こがし、百合根、ところ、橙をお供えしたところ喜んで召し上がった伝えられています。
 この六月十五日(新暦七月十五日)に来宮神社の例大祭・こがし祭が行なわれ、熱海の氏子は海岸に出て、当時を偲んでお祭りします。
例大祭は、宵宮祭の7月14日から16日まで、以下の各祭儀が執り行われます。

例大祭の祭儀次第

宵宮祭
(よいみやさい)

七月十四日執行
 明日から斎行されます例大祭の一切の神事が無事奉仕できるよう神々の大前で祈念する祭事です。

例大祭
(れいたいさい)

七月十五日執行
 海から此の地にお木像が祀られた日、つまり御祭神が鎮まられた日が新暦の七月十五日となります。

 熱海に住む人々・熱海に入り来る人々を御守りくださる来宮神社の神々に感謝申し上げる神事です。海辺で神様に『麦こがし』を供えたと云う故事から、別名『こがし祭り』とも云われ、例大祭には必ずお供え致します。
 又『百合根』『橙』『ところ』も古来より特殊な神饌としてお供えしております。

 現在では、15日16日両日 熱海市街地中や国道135号線を山車が練歩く 山車コンクール も同時に開催されており、熱海の夏の風物詩として、観光の目玉ともなっております。毎年、山車 30基超、神輿 30基超 でこがし祭りが盛り上がります。

宮神輿渡御
(みやみこしとぎょ)

七月十五日執行
 江戸末期に作成された大変古いお神輿で、暴れ神輿として有名な時代もありました。平成三年に復活し、今は厳かの中にも威勢良く担ぎ上げられています。大神輿に神々を乗せ、熱海の町を氏子各町内会の青年等が町内渡しで、渡御して行きます。

來宮神社 鹿島踊
(かしまおどり)

七月十五日・十六日奉奏
 静岡県民俗無形文化財に指定されております民俗芸能で男三十名程度で神々に捧げる踊りです。

 鎌倉時代、鹿島地方より海を渡り此の伊豆・相模地方に伝えられ、二十二ヶ所の里で踊られております。中でも来宮神社鹿島踊りは伝えられた踊りを頑なに守り、現在では来宮神社鹿島踊保存会によって伝承されております。

 踊手の持つ柄杓からこぼれ落ちる色紙は、稲米を表し、五穀豊穣・厄払いの意味をもちます。また踊り手が円陣(えん)から角形陣(さお)になる瞬間が非常に難しく、又華やかでもあります。

 鹿島踊は、境内、熱海駅前、渚小公園と、約1300年前のお木像を拾われたと伝えられる方のご子孫の家の前(銀座通)で奉納されます。

來宮神社 神女神楽
(みこかぐら)

七月十五日・十六日奉奏
 鎌倉時代、高貴な殿方が伊豆地方に流された際、早く都に帰りたいと願いを込め、来宮神社の大前に舞を奉納したのが始まりと云われております。氏子の中から一名選ばれた幼女が例祭当日神楽を奉納するため、何ヶ月も前から稽古に入ります。

 例祭奉仕期間中は、神女となるため、親でさえ、子供に触れることは出来ず、神女は地面に足をつけることも禁じられております。例祭最終日に神楽を舞う際に使う茅の持ち草を川に流し、神女から幼女に戻ります。現在では来宮神社神女神楽保存会により伝承されております。

浦安の舞
(うらやすのまい)

七月十五日・十六日奉奏
 皇紀二六〇〇年を記念し、昭和天皇の御製

   天地の神にも祈る朝凪の
       海の如くに波立たぬ代を

に当時宮内庁楽長多朝麿が曲・振り付けを加えた平和を祈る舞です。

 氏子の中から毎年四人の少女が選ばれ、装束を纏い、御神前に奉奏致します。

神幸祭
(じんこうさい)

七月十六日執行
 来宮の神々を御鳳輦(ごほうれん)に乗せ、町に降ります。町の繁栄を祈る神事です。

 神々に供奉する宮司・神官をはじめ、総代・神役など御神幸行列は総勢五〇〇名を超え、壮大な時代絵巻の再現となります。

 行列の中の猿田彦は天尊降臨の際案内した神様で、御鳳輦に鎮座する来宮大神の案内をする役割です。御祭神と御縁の深い『むぎこがし』を道に撒き道中を御案内し、また人々は其のこがしに触れると無病息災・身体健康になると伝えられています。

御鳳輦
(ごほうれん)

七月十六日執行
 神々を乗せた御鳳輦は、毎年四十二才になる男子により担ぎ上げられ、町中を練り歩きます。厄祓の厳守な神事でもあります。御鳳輦奉仕者は、声高らかに『みょうねん』と発し、神々に感謝の気持ちを表しながら力強く担ぎ上げます。

 浜降りは、御鳳輦に鎮座する来宮神社の神々を奉仕者達が担ぎ上げつつ、浜から海中に入る神事で古来より代々継承されております。故事に基づき、其の習わしは御神体が海から流れ着いた浜で行われ、今日でいう東海岸である御神池に一年に一度奉仕者が御鳳輦を奉舁(ホウエイ)しながら海中へ入る神事です。

獅子舞
(ししまい)

七月十六日執行
 神幸行列に列する御獅子の発祥は、鎌倉期と云われております。御獅子は古来より、魔を食い尽くし、福を招くと言い伝えられていることから、御鳳輦に鎮まる神を護衛し、人々に幸をもたらします。

還幸祭
(かんこうさい)

七月十六日執行
 御鳳輦に乗せた来宮の神々にお戻り戴くお祭りです。又無事に神幸が出来たことを感謝申し上げ、例祭期間中の最後の奉納行事が行われます。